目的と手段

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目的と手段

第二次安倍政権になって悲願の憲法改正という言葉がチラホラとでてきます。
自由民主党の党是としてよくあげられるのが、自主憲法改正です。
自民党ホームページに立党した昭和三十年に制定された「党の政綱」の6番目には「独立体制の整備」という見出しがあります。

平和主義、民主主義及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。
世界の平和と国家の独立及び国民の自由を保護するため、集団安全保障体制の下、国力と国情に相応した自衛軍備を整え、駐留外国軍隊の撤退に備える。

自民党支持者の方、自民党員、現職自民党国会議員も把握していない方が多いのではと感じます。
3つの原則(平和主義、民主主義、基本的人権)を堅持しながら、憲法を自主的に改正すること。
集団安全保障体制の下、国力と国情に合わせて自衛軍備を備え、駐留外国軍隊の撤退(在日米軍)に備える。

ようするに日米同盟を維持したまま、本土の防衛は自力で行うということ。
「撤退に備える」
相手がいますし、いずれ米軍は撤退するというニュアンスにも聞こえます。
ニクソンと佐藤会談のようなすごい事例もあることですし、米軍とそのようなコンセンサスが取れていたのかどうかはわかりませんが、自民党の等の指針としては撤回されておりませんので、憲法の自主的改正と集団安全保障の要たる日米同盟を維持しながら自衛軍備を目指すということです。

さて、タイトルにもある「目的と手段」です。
私個人的には、憲法「典」の改正に賛成ですし、最終的には違憲とならない日本にあった憲法典の新規策定が必要と考えています。
(違憲とならない憲法典というと意味がわからない人も多いかもしれませんが、いずれ記事にしたいと思います。)

現状の憲法改正が実現可能か否かの国内状況は置いておきまして、なぜ憲法を改正せねばならないかのおさらいをします。
あえて、感情は取り除いて冷徹に分析します。

目的は、日本国民の安全保障。
日本国民の安全保障を維持するために必要なものは。

  1. 防衛力強化
  2. 経済力強化
  3. 集団的自衛の確立
  4. 国民の教育

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1.防衛力強化

まず、1の防衛力強化ですが、こちらに憲法改正(9条)も含まれます。

憲法典を含む各法律の問題

仮想とする敵勢力から国民を守ることができる体制になっているのかといわれると、微妙です。
戦後の日本は「専守防衛」を軸に予算を組み、準備し装備を整えていますが、他の先進国の将軍に1時間かけて説明しても理解してもらえない防衛方法です。

第九条

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

なかなか強烈な文章です。言葉尻から某国の怨念が伝わってくるような文章です。同じ敗戦国のドイツにはこのような憲法を押し付けておりませんので、相当日本との戦争を再びしたくないように見えます。(これは私個人の主観です。指導する立場にあるGHQ内に共産党系の人材がいたのは事実ですが、各案を立案、承認した事実は変えられません。)

現在解釈で防衛力・自衛力は国際法に基づいて保有していると解釈しているものの、防衛・自衛する戦力と戦争をする戦力の区別というものは区別できるものではありません。

現在日本にいる憲法学者の7割は自衛隊を違憲としています。(数字は真実ではないかもしれません。)

そこで、9条に自衛隊を明記するという案がでてきました。
この時点で憲法典を法律やルールと勘違いされているのではと感じます。

憲法は憲法典に記載されているものだけが全てではありませんし、国民を守らない条文は違憲であると言えます。(71年間抱える矛盾)

例えば、今般、日本では選挙権を持つ年齢を引き下げましたが、憲法第15条では選挙権を持つのは成人と規定されています。
成人年齢は法律で操作して…となるわけで、こちらもよくよく考えると憲法解釈の変更と言えます。

本問題は、先送りにすることなく国民全員が一丸となって、正しい知識をもってよく考えて結論をだすべきでしょう。
有事に備えて急いで適当に変えると、喜ぶ勢力がいるやもしれません。

では、他国ではどのようになっているのか。
侵略戦争をするための軍隊を保有するとしている国家は、建前上どこにもありません。
憲法の内容は、意外なことに似たり寄ったりです。(防衛・自衛は否定していません。)

過去の戦争で一度たりとも宣戦布告しない国もあります。(防衛なので)

現在の日本は、防衛の解釈を国際的に稀有な考え方である「専守防衛」としているので、直接攻撃を受けない限り反撃はできませんので、北のミサイル示威行為に対応できませんし、自国民の拉致や誘拐などにも対応できません。(自衛という意味では攻撃をされているので法整備で対応できるのではと思います。)

ここで簡単に敵基地攻撃について言及します。

予防攻撃は、侵略と防衛の境目が曖昧でまだまだ議論の余地があり、採用は難しい。(敵がミサイル基地を作り始めたので、今後脅威にならないよう攻撃する。)
こちらは、イスラエル軍がイランに対して行い問題となった事例です。

先制攻撃は、現在の日本の法制度ではできません。(敵がミサイルの発射準備していることが衛星によって確認された。脅威にならないよう攻撃する。)
これは先般、敵基地攻撃能力云々で話題になったものです。
このように防衛に当たる先制攻撃すら日本に認められていませんので、防衛能力に不備があり撃たれてからミサイルを撃ち落とすといった最終防衛のみに頼った高予算の部類の防衛しかできない状態となっています。

情報機関とインテリジェンス

こちらは戦前の日本も持ってはいたものの、有効に活用できていなかったりと敵勢力に国家中枢が翻弄されたといったことがありました。
戦前の外務省の情報収集能力はまだありましたが、現在では外から見る限り、外務省は「日本の国益」を目的としているというよりも「相手国と友好を結ぶ」ことを目的としているように感じます。これはアメリカの国務省にも同じことが言えますが。
インテリジェンス機関がしっかりしていないため、先の大戦の原因が正確に総括できていませんし、周知もされていません。総括できていないので反省もできず、下手をすればまた同じミスを犯す可能性が非常に高いです。
日本においてはやっと国家安全保障会議 (日本版NSC)が、つくられました。ノウハウもありませんが、これからです。
最近では、アメリカの草の根保守やアメリカ軍の方がまともに総括しているのではと感じます。(ここらへんは江崎道朗先生の書籍が詳しいです。)

防衛予算

また専守防衛にしても仮想敵の戦力が年々増加しているにもかかわらず予算がほとんど変わっていません。
安倍政権になってから予算が少しずつ増加していますが、それはあくまでも国内価値換算(日本円)であって、デフレが続いた日本では20年ほど為替相場がほぼ変わらず、経済成長率、インフレ率が上がっていないことを考えると日本の国防費は国際的に相対化して見ると年々低下しています。
一時期、自衛隊では2個め以降のトイレットペーパーが自腹という話がありました。今は改善しているようですが、そのような軍隊は聞いたことがありません。
現在の日本のエネルギーの8割はホルムズ海峡経由に依存しています。そのシーレーンはアメリカが防衛しており、日本は一切の防衛をアメリカに依存しています。
現実的ではありませんが、すべてのシーレーンを自国で守るとなると最低でもGDP比7%は必要だという解説を見たことがあります。
せめて共同でやるべきであろうと思われます。外洋に出て防衛することについては現在も行っていますので、法的に問題はありません。

2.経済力強化

明治期のスローガンである富国強兵とは言い得て妙で、戦後のレッテル貼りによりネガティブなイメージを持たれている人もいると思いますが、現実には国民の安全保障のために攻められないために必要なこととして第一にあげられます。
さて、今の日本においてはどうかというと、先にも述べましたが20年間ほとんど経済成長していません。
実は、20年間の経済成長率のランキングでは日本が最下位です。ほぼ横ばいです。
成長率が低いと言われた他の先進国でさえも最低でも平均1.5%成長しています。
政府は残念なことに小手先の対策は打つものの、根本的な経済政策(少子化対策)というものはこれまで立てていません。
今やっている一億総活躍社会というのも少子化を促進する政策の一つです。
デフレ期の増税を実施していることも大きな原因の一つです。
20年間ほとんど賃金が増加していないにも関わらず消費税や保険額が増えれば、1ヶ月あたりに使えるお金は減るのは当たり前です。
幕末の財政難に陥った各藩の政策とかぶります。
金は天下の回り物といいますが、お金は回ってはじめて経済がまわります。

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3.集団的自衛の確立

戦前と違い武器が高価格化し、兵士育成の予算もうなぎのぼり。
また先進国では後進国に比べ人道的ですので、人の命の価値も高い傾向にあります。
そこでなるべくして行き着いた先が集団的自衛です。
現在、日米安全保障条約を結んでおり、日本とアメリカは同盟関係にあります。
が、片務的な条約でアメリカが攻撃されたときに日本が動くことはできません。
在日米軍基地や日本近海で攻撃された場合はサポート可能だと思いますが、米領や米本土にいる米国民を守るといったものはありません。
この同盟ができる前の日米関係と敗戦後の経緯を考えるとそうせざるを得なかったのは理解できますが、ニクソン然り何度も日本側に打診はあったようですが、日本の国内世論のため断っています。(それが原因でニクソンショックが起きました。)

現在、安保を誤解している人もいますが、あくまでも日本防衛は日本の自衛隊が主体で防衛し、アメリカ軍はそれをサポートするという位置づけです。
ちょっと前まで、アメリカ太平洋軍は敵勢力がきたら一旦グアムまで引いてからの反抗作戦を主としていたそうです。
自衛隊が立案した日本領の離島間を敵勢力を通さない軍備と作戦、対艦ミサイル配備によりアメリカ側の対応も変わったとのことです。(つい数年前の話しです。)
現在、日本が主体で守りきることができるのかというと、ピーター・ナヴァロの書籍でシミュレートされたものでいうと半年間は奄美大島以南が取られるという恐ろしい分析があります。
また、片務的な条約ゆえアメリカが本腰を入れないという人もおります。
が、在日米軍は日本のためではなくアメリカの太平洋権益のために存在し、日本と利害が一致するため、そのような心配はないと思われます。

4.国民の教育

国民の安全保障をプロフェッショナルである制服組や政治家がいくら熟考し、立案したところで法治主義で民主主義国家である日本では、国民の支持がない限り動けません。
意外なことに日本においては、政策は世論によってかなり左右されることが判っています。
これは憲法改正前の戦前でも同様で支那事変やその他の国際問題の対応もかなり国民世論の後押しがありました。
そういった意味でマスコミ・メディアは非常に影響力があったわけです。
残念なことに、現在一般人が正しい知識を得る手段というのは、自分から情報を得ようとしない限り困難です。
採用された学び舎の歴史教科書を見た感じ、主体が日本ではなく、非常に内容が不適当でした。
教育については、制度や内容を根本的に見直す必要があるのではないでしょうか。

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まとめ

日本の目的を達成するためにはまだまだやるべきことがたくさんあります。
保守陣営で憲法改正賛成している中でも目的と手段がブレている人がいるようにも思います。
日本国の憲法典は、70年以上も変更せずにきたため、改正は一番難易度が高いのではないかと思います。
憲法典改正の難易度を下げるという手段として、明らかに誤植である第七条の改正を先にやるのも手かもしれません。

優先順位を考えて目的を段階的にでも達成するにはどの順番でどのようにやればいいのか、冷静に見つめ直す必要があるのではないでしょうか?

現法制でも目的達成に近づけるためにできることはたくさんありますが、一部動きはあるものの、残念なことに対策しているように見えません。

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