中国の定義 第3回

中国の定義

スポンサードサーチ

4.漢字・言語

民族の混血が進んでいても、言葉や文字(漢字)を継承しているという声もあるかと思います。黄河文明の甲骨文字が漢字になって現代まで使われて続けているというのが、4千年の根拠だろうと推測いたします。

古代ローマ人が利用したラテン文字(アルファベット)を現在利用しているからと言って、ロマンス諸語のイタリアやフランス、スペインやゲルマン語派の英国やドイツ、アメリカがローマ文明を継承し続けているとは誰もいいませんし、思ってもいません。

あたかも中国語というひとつの言語があるかのように感じている日本人は、大多数なのではないかと思います。旅行経験者であったり、香港映画とかに触れていたりしていれば、広東語はちょっと違う。あるいは方言だという感じで認識しているかもしれません。

中国を国家名称として考えた場合、中国語はかなりの数が存在します。
普通話(プゥトンフア)や客家語、湘語、贛語、上海語、西南官話、西北官話、晋語、下江官話などなど、たくさん存在します。また漢字を使わない言語(チベット、ウイグル、モンゴルなど)を含めるともっとたくさんの言語が存在します。

共通語とされる普通話の普及率は、2014年時点で58%と現在でも統一されているとは言い難い状況です。
これらの言葉は現在、シナ・チベット語族として、まとめられていますが、広東語、海南語、閩南語、上海語、北京語は別の言語で、お互いに通じません。

よく言われる青森の人と九州の人が通じないというレベルどころではなく、一言も通じません。朝鮮語に日本語からの借用語がたくさんあるからといって同一言語だという人がいないのと同じです。

これらのシナ諸語は、共通の祖語から分かれていった言語ではなく、もともと別言語であったものが、交易によって栄えてきたシナにおいて、時間がたつにつれて互いに借用語が増え共通な語彙が増えていったため類似した言語、方言だと認識されているというからくりです。

日本語は千年以上文法が変わらない世界的に見ても珍しい言語です。

では漢字(漢文)はどうなのか?

一部農民までもが読み書きできた日本と違い、元来、漢字を使える人は、基本的には科挙試験に合格した官僚か試験にチャレンジした人間のみです。印刷技術が発展した宋代になってくると商人や職人などが仕事で使うようになったものの、基本的には全人口の一部の人間のみが使用していたという状態が戦前まで続きました。

漢文と話ことばである言語とは関係はありませんでしたが、鮮卑系の隋唐の時代になって各地の日常語に漢字の組み合わせである熟字からの借用語が増えていった程度で基本的には、文語(漢文)と口語(話し言葉)は全くの別物でした。

また唐の李白や杜甫といった人々は、鮮卑語を母国語とした人であったため、四書五経にはとらわれない漢字配列を利用し画期的な名文を残しました。

漢文は一部例外を除き、文法は基本的には語順だけです。
語順は、時代により変遷しており、地域によっても違いがあります。

前回言及しましたが、言語学者の橋本萬太郎氏によると、シナでは十世紀を境に言語が著しく変化しているとのことです。

現在日本においては、「たべる」(eat)は「食」という漢字を使います。
現在、中国では「喫」という漢字を使っています。
「飲」は「渇」、「犬」は「狗」、「目」は「眼」、「口」は「嘴」といった感じになります。
なぜこのようなことが起きているかというと、日本に伝わった古い漢字の語彙は変遷せずに現代まで伝わっているからです。日本で使われている漢字の音読みは唐の時代の発音をもとにできています。
シナにおいては、10世紀~14世紀にかけて、語彙がそれぞれ別の語に置き換わっています。
著しい異民族の流入によって変化をもたらしたのではないかといわれています。
同様に発音に関しても、二重子音がなくなり、RがLに変わるなど音も変化しています。

そして現代の中国では、漢字を簡略化して「簡体字」として使っていますが、簡略化の仕方が、元来の漢字の意味を知るものからしてみても意味不明な簡略化の仕方をしています。

例:華→华 葉→叶

昔の漢文は文法や語順だけでなく、文字自体も違うため、現代の中国人は読むことができません。
歴史学者の宮脇淳子氏によると、現代中国語の7割は日本語起源であるとのことです。
幕末明治期に日本人が欧米留学して得た近代の用語は、日本に帰国後、日本に住む日本人に教えるために和製漢語としてあらたに作成しました。

例:人民、改革、解放、同志、進歩、思想、理論、階級、社会、科学、政治、経済

四書五経からくる漢文には二字の単語はほとんどなく、日清戦争後には8000人から9000人に達した清国の留学生が日本留学して教科書ごと持ち帰って利用したことに由来します。

四書五経

日清戦争までシナにおいては、四書五経にかかれている語彙と語順だけがすべてでした。

次回につづく

1 支持する! 記事が気に入ったら支持する!をお願いします。